私がブエノスアイレスで暮らし始めたのは、今からおよそ24年前の89年3月のこと。知り合いもいない見知らぬ国に独りで来てしまった当時、アルゼンチンは本当に日本から遠い国でした。両国を結ぶ飛行機はカナディアン航空かヴァリグ航空しかなく、今のようにメールやSMSで簡単にコミュニケーションが取れるわけでもなく、一般家庭の固定電話からは国際電話がかけられなかったので、日本とコンタクトを取るためにはいちいちオフィス街にあるENTEL(当時のアルゼンチン電信公社)まで出向くしかなくて。
そんな時代に唯一、ブエノスアイレスの情報源となったのが「地球の歩き方」のガイドブック。私は憧れの街に着いてすぐ、そこで紹介されていた「70年ものの古い木製車両」に乗りに出かけたのを覚えています。それが、今年1月11日まで現役で走っていた地下鉄A線の車両でした。
1913年に開業したA線は、なんと日本最古の地下鉄である東京銀座線のモデルにもなったという路線。日本の技術者たちがブエノスアイレスまでやって来て、世界の最先端を行く地下鉄を見学し、その技術を日本に持ち帰ったのだそうです。
その歴史ある路線を開通当時から走っている木製車両は、ベルギーの車輌製造会社「ラ・ブルジョワーズ」 製。
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