Tuesday, February 28, 2012

青空アートギャラリー その2 [ブエノスアイレスのストリートアート]

ブエノスアイレスを歩いていると、常時視界に飛び込んでくるストリートアート。実はブエノスアイレスは、こういったストリートアートを積極的に支援している街。市の規則で、建築物の主の許可さえあればそこにアートを施しても良いとされていること、地区によっては大規模な廃墟があり、そこが恰好のキャンパスと化していることといった理由から、アルゼンチン国内だけでなく、海外の有名なアーティストたちも集結して、数多くの芸術作品を残しています。
でも、大作と呼ばれるものの大半は、観光客が行くことなど絶対にない地区に集中しているもの。そこで、なかなか人目につかない、たくさんの大規模なアートを「この街を訪れる人にぜひ見てもらいたい」という発想から、ブエノスアイレス在住のイギリス人ジャーナリスト、マット・フォックス・タッカー(Matt Fox-Tucker / 画像右)が自らガイドとなって、ストリートアートのツアーを行なっています。


マットは、ブエノスアイレスのストリートアートを紹介した本「Textura Dos」の著者。アルゼンチンを始め、世界中のアーティストたちと密にコンタクトを取り、彼らの最新情報を随時追っています。そんなマットの詳しい説明を聴きながらアートを観始めると、ひとつひとつの作品の奥深さ、各アーティストの思い入れ、ストリートアートならではの問題や葛藤など、今まで全く知らなかった未知の世界にどんどん引きずり込まれるような感覚に。
 ツアーの間、違う場所に移動して同じアーティストの作品に出会うと、「あ、またこの人の絵!」とすっかり親近感を抱いて見入ってしまうことも。驚いたのは、数年前に描かれた作品についてマットが「これは古いもの」と説明していたこと。よほど権威あるアーティストの作品でもない限り(時にはそうであっても)、他の人が上からどんどん描いて、容赦なく消されて行ってしまうのです。マットまで「これは先週まではなかったな」と呟きながら、新しい作品を写真に収めたり。でもマットによると、その変革の速さこそ、アーティストたちの創造意欲を掻き立たせるのだとか。まさに、目まぐるしく移り変わる現代社会を象徴しているモダンアートといったところでしょう。
最近では、アーティストを養成するための教室が開かれる機会も増えていて、カラースプレーの使い方や、ステンシル画の作り方などを教えてくれるのだそう。今後、新しいアーティストたちによって、更に面白くて素晴らしい作品が増えることに期待しています。

☆ストリートアート・ツアーの詳細はこちら:http://www.buenosairesstreetart.com/tours

*追記1:マットが英語で案内するストリートアート・ツアーは、ブエノスアイレス市内を3時間近く歩き続けるウォーキング・ツアーです。途中、Colegiales駅からSaavedra駅間を電車で移動したり、人気のないところを歩いたりするので、歩き易い靴に楽な服装で、念のため、高価なものはできるだけ身につけずに参加されることをお勧めします! 

*追記2: 下の動画は、世界的に有名なイタリアのストリートアーティスト「Blu」がブエノスアイレスで作成した短編映画「MUTO」。絵を描くのに7ヶ月、編集に6ヶ月もかけて作られたもので、Youtubeでは1000万回以上も視聴されている有名な動画です。いくつもの作品をブエノスアイレスに残しているBluの不思議で独特な世界をぜひご堪能ください。


Saturday, February 25, 2012

本場のピッツァ・ナポレターナが食べたければこちら! [Siamo Nel Forno]



前回、「ブエノスアイレスのピザは世界的に評判が悪い」ということと、ここのピザは独特の「ポルテーニョ(ブエノスアイレス)・スタイル」であることを紹介しましたが、では本格的なピザは食べられないのか?という心配はご無用。ちゃ~んと本場イタリア・ナポリの「ピッツァ・ナポレターナ」を焼いているピッツェリアがあるのです。
「Siamo Nel Forno」(シアモ・ネル・フォルノ)は、ポルテーニョ・スタイルのピザを酷評する欧米人の方々はもちろん、グルメなポルテーニョたちからも高い評価を受けているピッツェリア。「Siamo Nel Forno」とは、ポルテーニョたちがよく使う「estamos en el horno」という決まり文句のイタリア語訳。直訳すると「我々は釜戸の中にいる」、つまり二進も三進も行かない、とっても大変な状態にあるときに使う台詞。これに、お店の自慢である石釜を引っ掛けたネーミングというわけです。

なんたってこの石釜は、オーナー兼ピッツアイオロのネストル・ガットルナがナポリから取り寄せた本物。中の温度を400度以上まで熱してから、ピザを60~90秒で焼き上げます。一番人気があるのはシンプルなMargherita(マルゲリータ / 画像左下)。生地の周りはきめ細かくてもっちもち、中心は薄くてパリパリ。上質のモッツァレラに、新鮮なバジルの香りとトマトソースというお馴染みの組み合わせによる、安心できる美味しさです。
でも、スカスカのパンのような生地にチーズどっかりのポルテーニョ・スタイルのピザが大好きな夫は、これでは物足りない。それならばとお店の人が勧めてくれたのがカルゾーネ。ピザ生地を半分に折り、中に様々な具を詰めたもので、まるで巨大なエンパナーダみたい。 高温でさっと焼き上げたカルゾーネもやっぱり、外が香ばしくパリパリ、中はふわふわでもっちもち。薄いピザよりも食べ応えは十分です。

この他、チーズとガーリックだけで焼いた生地の上に生のほうれん草がたっぷり載せられたSpinaci(スピナッチ)、前菜にはプロヴォローネとプロシュートの盛り合わせなどが人気のメニューだそう。飲み物はもちろん、イタリアのビール「Moretti」が大人気。デザートには、ピザ生地の間にヌテッラを挟んだPane Bianco con Nutellaを食べたかったのですが、さすがに追加カルゾーネのせいで粉ものはもうお腹が受け付けず。焼きりんごやパンナコッタもこの日に限って準備できていなかったので(残念!)、ティラミスとillyのリストレットをいただいて、大満足でお店を出ました。
業界人が集まるパレルモ・ハリウッドにある人気のお店なのに気取ったところがなく、内装も簡素。家族や友達が集まって、わいわいと明るく賑やかな雰囲気の中で食べる本場のピザに、しばらく病みつきになりそう!

Siamo Nel Forno
Costa Rica 5886(Ravignani通りとの角近く / パレルモ・ハリウッド地区)
Tel. 4775-0337

Thursday, February 23, 2012

ポルテーニョたちに愛されるピッツェリア [Güerrin]

イタリア移民がたくさん住んでいるにもかかわらず、ブエノスアイレスのピザは欧米人から「世界一不味い」という、なんとも不名誉なレッテルが貼られています。各国の様々な口コミお役立ち情報をまとめたサイト「Matador Nights」でも、「世界のワーストピザ」の中で堂々とトップ5にランク入り。この街を訪れる欧米人たちの大半が「ブエノスアイレスのピザは美味しくない!」と口を揃えるのです。
彼らが美味しくないと評する理由として挙げるポイントは、決まって以下の3つに絞られます。

1:トマトソースの存在感が薄い、またはナイ
2: 生地がスカスカのパンのよう
3:とにかくモッツァレラチーズ載せ過ぎ!

確かに、大抵はゴムみたいなチーズがどっかりたっぷり載っかっていて、見ただけでお腹がいっぱいになってしまいそうですが、ポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)たちはこのピザがだ~い好き。私の夫も「そのチーズが美味しいんだ!」と力強く主張します。トマトソースから主役の座を奪うチーズこそ、ブエノスアイレスのピザの醍醐味だというわけです。


 そんな「典型的なポルテーニョ・スタイル」のピッツェリアの代表格が「Güerrin」(グエリン)。創業は1932年、今年で80周年を迎える老舗で、昨年末「ブエノスアイレスの文化遺産」に制定された由緒あるお店です。入り口を入ってすぐのところに設けられている「立ち食い専用カウンター」は、お昼時、立ったままピザを食べて颯爽と去って行く粋なポルテーニョのオジさまたちで大混雑するスペース。てきぱきと機敏に動くウェイターさんたちの間をすり抜けて奥に進んで行くと、テーブル席があります。いろんな種類がある中で私のおススメはSuper Güerrin(スーペル・グエリン・画像右)。秩序も遠慮もなくトッピングされたパプリカとオニオンが、どっしり重たいモッツァレラ顔負けの存在感を発揮していて美味しい。生地もパリパリではないけれど、食べやすい厚さです。

ここで働くピザ職人さんたちの中には、ピザを焼いて30年というベテランも。ブエノスアイレスのブロードウェイと呼ばれるコリエンテス大通りがまだ狭い小道だった頃から、庶民の生活に欠かせないピッツェリアとして歴史を築いてきたGüerrin。生地からはみ出るくらい惜しみなくモッツァレラが載せられているのは、もしかしたら農業大国ならではの贅沢なのかも。そんなことを考えると、欧米の人たちからいくら酷評されようとも、ポルテーニョたちが愛し続けるこの独特のピザに愛着を感じずにはいられません。 

Güerrin
Av. Corrientes 1368 (Uruguay通りとTalcahuano通りの間)
Tel. 4371-8141

☆追記:ブエノスアイレスには「Güerrin」の他にも、「El Cuartito」(Talcahuano 937)や「Banchero」(Suarez 396)など、有名な老舗ピッツェリアがいくつかあります。歴史ある庶民的なお店で、faina(ファイナ=イタリア語ではファリナータ)というひよこ豆のパンケーキをピザに重ねて食べる、究極のポルテーニョ・スタイルをぜひお試しあれ!

Tuesday, February 21, 2012

クリーミーなジェラートでリフレッシュ! [Arkakao]

蒸し暑~い日が続く真夏のブエノスアイレス。こんなときは、アイスクリーム屋さんでリフレッシュするのが一番です。
ポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)たちは老若男女を問わずみんなhelado(エラード=アイスクリーム)が大好き。その美味しさについては以前の記事「アイスクリームの鉄人によるアイス」でも紹介したとおりですが、エラード好きの間で最近話題となっているのが「Arkakao」(アルカカオ)。ここでは本場イタリアのジェラートを味わうことができます。

他のアイスクリーム屋さんと同様、まずはレジにて容器とサイズを選んでお会計。1カップにつき2種類のジェラートを選べるのですが、うむむ、どれも見るからにクリーミーで美味しそう。名前が全部イタリア語で書かれているので、わからなければ遠慮なく質問しましょう。1~2回くらいまでなら、小さなスプーンでお味見もさせてもらえます。

発砲スチロールのカップはテイクアウト用ですが、その場でいただきたい時にはガラスの容器をチョイス。好きなフレーヴァーを選んでおいて、あとはテーブル席まで運ばれて来るのを待ちます。人工着色料も保存料も使わず、自然の素材だけで全て当日に作られているというジェラートは、コクがあって舌触りが良くて、こちらのエラードに比べると甘さは控えめ。ただ、クリーミーさが濃厚なだけに、デザートグラス一杯分はちょっと多いかも。テイクアウト用の一番小さなサイズがちょうどいいかもしれません。おススメフレーヴァーはNocciola(へーゼルナッツのクリーム)、Cioccolato Extra Fondente(ダークチョコレート)、Panna Cotta(パンナコッタ)などなど。フルーツ系もソフトな味わいで美味しい!と評判です。

北イタリアのアオスタにある本店「Kakao」のアルゼンチン支店ということでネーミングされたこの「Arkakao」ですが、支店第1号となったのはブエノスアイレス店ではなくロサリオ店。なんでも、ロサリオ市は世界で最も大きなイタリアン・コミュニティなのだそうで、オーナーであるジオヴァンニ・ジラルディーニ氏が「その昔、祖父母が母国イタリアで味わっていたジェラートの美味しさを子孫たちにも伝えよう」と思いついたことが支店を作ったきっかけだったとか。
併設されているティーサロンでは、朝食、簡単なランチ、アフタヌーンティーもサーヴされます。閑静な高級住宅街レコレータ地区のど真ん中に位置しているので、店内の雰囲気も落ち着いていて居心地満点。でも、テイクアウトしたジェラートを味わいながら、アール・ヌーヴォー様式の美しい建物が並ぶレコレータをゆっくりお散歩するのもいいですね。

Arkakao
Quintana 188 (Montevideo通りとの角近く / Recoleta)
Tel. 4813-7585
*公式サイト:http://www.arkakao.com.ar

Monday, February 20, 2012

ブエノスアイレスの治安について


いつもはこの街の素敵なものばかりを紹介しているブログ。でも今回は、「ブエノスアイレスの治安について」という、ややシビアな話題を取り上げます。
去る2月8日、市内のサン・マルティン広場にて、写真を撮っていたフランス人の観光客が突然強盗に襲われ、カメラを奪われた挙句に刺殺されるというとても悲しい事件が起きました。 現場は、高級ホテルや観光客向けのお店も建ち並ぶ繁華街。しかも、多くの人が通勤のために行き交いする午前8時半という時間帯。見通しの良い大きな広場で、たくさんの人通りがある中、危険を感じない方が普通でしょう。でも実は、このサン・マルティン広場は犯罪が多発する地区。大規模なスラム街「Villa 31」(ビージャ・トレインタ・イ・ウノ)から近いこともあり、昼間から窃盗が絶えない場所なのです。
私の夫はスポーツ・フォトグラファー。前科者が何百という単位で集まるサッカー場が仕事場です。試合中に写真を撮っていたら突然、スタンドから自分の横に何か落ちてきて、拾ってみたらよ~く研ぎ澄まされた包丁の刃の部分だった、なんていうことは日常茶飯事。また、プロ仕様の撮影機材一式は車1台の値段を上回るほど高額なものなので、盗難の格好の的になるのも当然。常に危険と背中合わせの状態ですから、いつもいつも細心の注意を払っています。
ところがそんな夫でも、コロンビアのサッカー場で機材をごっそり盗られたことがあります。しかも現場は、軍事警備隊が見張るプレス専用入り口でのこと。つまり、サポーターたちで混雑する「危険ゾーン」を通り抜け、ようやく関係者しか入れない(はずの)安全な区域に到達した時に起きたわけです。前述のケースと共通しているのは、よそから来た人が「ここなら大丈夫だろう」とうっかり思いがちな場所で起きたということ。犯罪者は、そういう一瞬の油断を見逃しません。
海外から来る観光客向けにブエノスアイレス市内のスラム街を回るツアーなんていうものがあるのですが、私は絶対におススメしません。サッカーライターとして、何度かスラム出身の選手を取材をした経験からわかったのは、スラムに住んでいる人たちは毎日を精一杯、必死に生きているということ。そして、外の社会に対し、私たちの想像を超える疎外感と敵対心を抱いているということ。そんな心理を考慮することもなく、彼らが住んでいるところに興味本位で潜入するという挑発的な行為そのものが、結果的には冒頭のような事件を引き起こすきっかけを作っているように思えてなりません。
カメラは使ったらすぐバッグにしまう。バッグは必ず肩にかけ、身体の前でしっかり抱え持つ。人通りが少なく、特に週末、路線バスも走っていないような閑散とした道は歩かない。100%保証付きの安全対策とは言い切れませんが、これらを常に意識して、油断しないことが大切です。そして、もしも運悪く強盗に遭ってしまったら、絶対に抵抗しないでください。抵抗してしまうと、前述のフランス人同様、盗難だけで済まなくなってしまいます。
ヨーロッパの気品と南米特有の混沌が入り混じった、不思議な魅力を放つブエノスアイレス。この街を訪れる全ての人に、最低限の用心だけは心がけていただき、滞在が楽しい思い出となることを願ってやみません。

* アルゼンチンの詳しい安全情報については、外務省のサイト()をご参照ください。 

*追記:ここに掲載した画像は全て、アルゼンチンの英雄たちの肖像をモチーフとしたストリートアート。上から、サッカー選手のディエゴ・マラドーナ、革命家エルネスト・チェ・ゲバラ、そして「エビータ」こと政治家エバ・ペロンとなっています。どこで見ることができるのかは、ナイショ。マラドーナとエビータは比較的簡単に見つかりますが、チェ・ゲバラは難易度高し! 

*追記2(2013年1月8日):レティーロ地区にあるアルゼンチン空軍広場(シェラトン前・時計台のある広場)は、文中で取り上げたスラム街から盗難目的で繰り出してくる強盗たちのたまり場となっています。ちょうど2つの交番所による管轄区の境で警備の死角になっており、非常に危険な場所ですので、広場に入ること、また広場沿いの歩道を歩くことはできるだけ控えるようにしてください。(この記事にアクセスしてくださる方がとても多いので、有効な情報として追記させていただきました)

*追記3(2014年3月1日):スリが多発するパリやローマでは「襲われたら大声を出して相手を威嚇する」ことや、「相手の手をつかんで現行犯で捕まえる」ことなどが有効な対策となっていますが、南米では全く逆効果で危険です。 ご注意ください。

Friday, February 17, 2012

ペルーを代表する有名シェフのお店 [Astrid & Gaston]

ずっと前から行きたいと思っていたペルー料理レストラン「Astrid & Gaston」(アストリッド&ガストン)。ペルーの首都リマに本店を構え、中南米諸国やスペインにも支店を抱えるという、国際的人気を誇るレストランです。ブエノスアイレス店は、我が家からごく近い徒歩圏内にあるので車に乗る必要もなく、ワインをたくさん飲んでも平気!ということで、先日のバレンタインデーに夫と一緒に行ってきました。
大きな一軒屋がそのままレストランに改装されていて、ドアを開けると、まるで誰かのお宅のリビングルームのような温かさが感じられる空間が広がっています。
ペルー人のとても親切なウェイターさんの案内で、窓際の明るいテーブル席へ。出来立てのパンに、huacatay(ウアカタイ)というミント科の葉の入ったきれいなグリーンのサルサが美味しくて、食事が運ばれて来る前から、ワインのお供についついどんどん食べてしまう私たち。やがて、私がここに来たかった一番の理由、セビーチェが登場!
セビーチェは白身魚をマリネにしたもので、環太平洋の中南米諸国のお料理ですが、ここのCebiche Clasico(セビーチェ・クラシコ)は、コルビーナ(日本名はオオニベ)という白身魚をleche de tigre (レチェ・デ・ティグレ)と呼ばれるマリネ液に漬け込み、炒りコーンのカンチータ とさつまいもを添えたペルーの典型ヴァージョン。見た目はシンプルですが、このleche de tigreの味わい深いこと。苦手なはずのコリアンダーがほのかに香っているのが、とても美味に感じられました。
続いて運ばれてきたメインディッシュ、私はArroz con Mariscos(アロス・コン・マリスコス=海の幸のリゾット)、夫はLomo Saltado(ロモ・サルタード=牛ロース炒め)。リゾットはhuancaina(ウアンカイーナ)というペルー独特のサルサがお味のベースとなっていて、牛ロース炒めは、nikkei(ニッケイ=日系)としてペルーの食文化に大きな影響を与えた日本食を思わせる味付け。しかもこれには白いご飯までついてきて、つい「さっきのセビーチェと一緒にご飯が食べたかった!」と悔やむ私。
デザートはウェイターさんのおススメから、Trio Peruano(トリオ・ペルアーノ=ペルーの代表的なデザート3種)をオーダー。Suspiro Limeño(ススピーロ・リメーニョ)というキャラメル味のクリームに、Arroz con Leche(アロス・コン・レチェ=ライス・プディング)、そしてPicarones(ピカローネス)という揚げドーナッツのようなお菓子が2人分、一皿に盛られています。Picaronesにはアニスの入った黒蜜がかけられていて、かりんとうを彷彿とさせる香ばしい甘さにしばし感動。美味しいワインもしっかり飲んで、大満足なバレンタイン・ランチとなりました。

Astrid & Gastonのオーナー兼シェフであるガストン・アクリオは、「弁護士になるように」という父の希望に従って法学部で勉強していましたが、食の世界への情熱から大学を中退し、シェフになるべくフランスのコルドン・ブルーに入学したのだそう。その後、ドイツ人の女性シェフ、アストリッド・グッツェと知り合って結婚。94年、リマにAstrid & Gastonをオープンさせたあとも、ペルー料理を国内外に広めるため、様々なレストランやフードチェーンをプロデュースしました。08年にはペルー料理の本「500 años de fusion」(500年の融合)を出版し、インカ帝国の前身となるクスコ王国にまで遡るペルーの食文化の歴史とその融合を紹介。09年、同書は「グルマン世界料理本大賞」にて最高賞を受賞して、2011年にはイギリスのRestaurant誌が主催する「世界のベストレストラン50店」の仲間入りを果たしました。
Astrid & Gastonのメニューには、このような一文が書かれてあります。「私たちは芸術家でもなければ真実の持ち主でもありません。ですので、もしあなたが欲しいもの、必要なものが(メニューに)なければ、どうかお問い合わせ、お申し付けください。ご満足いただけるために最善を尽くします」。値段の設定は高めですが、上質な味わい深い料理、謙虚なホスピタリティ、そしてその基盤となっている食文化と歴史に対する一流の誇りとこだわりに触れたら、きっと誰もが納得することでしょう。

Astrid & Gaston
Lafinur 3222(Cerviño通りとSegui通りの間 / パレルモ地区)
Tel: 4802-2991
*公式サイト: http://www.astridygaston.com

*残念ながら閉店しました。

*追記:セビーチェにはcebiche、ceviche、sebiche、sevicheと様々なスペルがあります。 アルゼンチン国内ではcevicheと表記されることが多いのですが、ここではAstrid & Gastonのメニューに従ってcebicheを起用しました。

Thursday, February 16, 2012

アルゼンチンの習慣 その1 / 食後にカフェ・コン・レチェはおかしい?



イタリア移民の多い国とあって、アルゼンチンにも「コーヒーを飲む習慣」が定着しています。でも、立ったままリストレットを嗜むイタリアとは違い、ポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)にとって「tomar un cafe」(カフェを飲む)ということは、テーブル席にゆっくり座って、飲みながらおしゃべりすること。その証拠に、ブエノスアイレス市内のスターバックス・コーヒーには、テイクアウト専門店は皆無。どのお店にも、ゆったり座れるスペースが十分に設けられています。街中でも、紙コップに淹れられたカフェを飲みながら歩いている人は、他の大都市と比べると断然少ないのです。(画像左:Caserosのコルタード)
つまり、もし「カフェを飲みませんか?」と聞かれたら、「一緒に座ってちょっとお話しませんか」というお誘いの意味。久しく会っていない友達への「Nos debemos un cafe!」(カフェしないとね!)なんていうお決まりの言葉もあるくらい。マテ茶と同じで、それを飲むということ以外に、人との大切なコミュニケーションの時間を共有するためのものなのです。(画像右:Farinelliのカフェ・コン・レチェ)

ブエノスアイレスのカフェテリアやレストランでカフェを頼むとき、基本となるのはこの5種類です。
  • Cafe solo(カフェ・ソロ):エスプレッソ式で抽出された濃い目のブラックコーヒー
  • Cafe cortado(カフェ・コルタード):ミルクをちょっと入れたコーヒー
  • Cafe con leche(カフェ・コン・レチェ) :大きなカップに入ったカフェオレ 
  • Cafe con crema(カフェ・コン・クレマ):クリームを1~2さじ浮かべたコーヒー
  • Lagrima(ラグリマ):ホットミルクにちょっとだけコーヒーを入れたもの
この他に、お店によってはカプチーノやリストレット、エスプレッソと、日本でも馴染みのあるコーヒーがメニューに含まれているところもあります。


ここで気をつけたいのがカフェ・コン・レチェです。カフェ・コン・レチェは通常、朝食時、または午後のおやつの時間に飲むもので、食後のコーヒーではありません。大きめのカップにたっぷりのミルクが入っていて、それだけで空腹を満たしてくれるものだからです。これは、フランスでのカフェオレも、イタリアでのカプチーノも同じこと。ある人は食後にカフェ・コン・レチェを頼み、ウェイターさんから「食事だけでは物足りませんでしたか?」と聞かれたことがあったそう。タブーではないので、食後に飲んでも何ら問題はありませんが、「普通は飲まないもの」ということを覚えておくのはひとつのマナーかもしれません。(画像左:Helenaのラグリマ)
でも、コルタードはコーヒーの量が多すぎて苦いこともあるので、食後にどうしてもカフェ・コン・レチェのように、コーヒーとミルクが半々のものが飲みたいという場合は「cortado, mitad y mitad」(コルタード・ミタ・イ・ミタ)と頼めばOK。発音が難しそうに感じますが、日本語で「見たいみたい」と言うように発音すれば完璧です(笑)。もっとソフトなミルク入りコーヒーが欲しい時はラグリマにするといいでしょう。私ももっぱらラグリマ、夫はいつもミタ・イ・ミタです。
(画像右:我が家のカフェ・コン・レチェ)

これからもアルゼンチンの習慣についてのお話を紹介していく予定です。どうぞお楽しみに!

☆追記:本来、食後に理想的なのはカフェ・ソロ、つまりブラックコーヒー。カフェインには胃液の分泌を促す効果があり、消化を助けてくれるからです。こってりした肉料理のあとにカフェ・ソロを飲むと、胃がす~っと落ち着くように感じられますよ。

ブログをなかなか更新することができないので、「ブエノスアイレスの日常」をインスタグラムにてゆるりと紹介しています。これからはこちらをフォローしていただけると嬉しいです♪ http://www.instagram.com/jpportena