Monday, February 20, 2012
ブエノスアイレスの治安について
いつもはこの街の素敵なものばかりを紹介しているブログ。でも今回は、「ブエノスアイレスの治安について」という、ややシビアな話題を取り上げます。
去る2月8日、市内のサン・マルティン広場にて、写真を撮っていたフランス人の観光客が突然強盗に襲われ、カメラを奪われた挙句に刺殺されるというとても悲しい事件が起きました。 現場は、高級ホテルや観光客向けのお店も建ち並ぶ繁華街。しかも、多くの人が通勤のために行き交いする午前8時半という時間帯。見通しの良い大きな広場で、たくさんの人通りがある中、危険を感じない方が普通でしょう。でも実は、このサン・マルティン広場は犯罪が多発する地区。大規模なスラム街「Villa 31」(ビージャ・トレインタ・イ・ウノ)から近いこともあり、昼間から窃盗が絶えない場所なのです。
私の夫はスポーツ・フォトグラファー。前科者が何百という単位で集まるサッカー場が仕事場です。試合中に写真を撮っていたら突然、スタンドから自分の横に何か落ちてきて、拾ってみたらよ~く研ぎ澄まされた包丁の刃の部分だった、なんていうことは日常茶飯事。また、プロ仕様の撮影機材一式は車1台の値段を上回るほど高額なものなので、盗難の格好の的になるのも当然。常に危険と背中合わせの状態ですから、いつもいつも細心の注意を払っています。
ところがそんな夫でも、コロンビアのサッカー場で機材をごっそり盗られたことがあります。しかも現場は、軍事警備隊が見張るプレス専用入り口でのこと。つまり、サポーターたちで混雑する「危険ゾーン」を通り抜け、ようやく関係者しか入れない(はずの)安全な区域に到達した時に起きたわけです。前述のケースと共通しているのは、よそから来た人が「ここなら大丈夫だろう」とうっかり思いがちな場所で起きたということ。犯罪者は、そういう一瞬の油断を見逃しません。
海外から来る観光客向けにブエノスアイレス市内のスラム街を回るツアーなんていうものがあるのですが、私は絶対におススメしません。サッカーライターとして、何度かスラム出身の選手を取材をした経験からわかったのは、スラムに住んでいる人たちは毎日を精一杯、必死に生きているということ。そして、外の社会に対し、私たちの想像を超える疎外感と敵対心を抱いているということ。そんな心理を考慮することもなく、彼らが住んでいるところに興味本位で潜入するという挑発的な行為そのものが、結果的には冒頭のような事件を引き起こすきっかけを作っているように思えてなりません。
カメラは使ったらすぐバッグにしまう。バッグは必ず肩にかけ、身体の前でしっかり抱え持つ。人通りが少なく、特に週末、路線バスも走っていないような閑散とした道は歩かない。100%保証付きの安全対策とは言い切れませんが、これらを常に意識して、油断しないことが大切です。そして、もしも運悪く強盗に遭ってしまったら、絶対に抵抗しないでください。抵抗してしまうと、前述のフランス人同様、盗難だけで済まなくなってしまいます。
ヨーロッパの気品と南米特有の混沌が入り混じった、不思議な魅力を放つブエノスアイレス。この街を訪れる全ての人に、最低限の用心だけは心がけていただき、滞在が楽しい思い出となることを願ってやみません。
* アルゼンチンの詳しい安全情報については、外務省のサイト(☆)をご参照ください。
*追記:ここに掲載した画像は全て、アルゼンチンの英雄たちの肖像をモチーフとしたストリートアート。上から、サッカー選手のディエゴ・マラドーナ、革命家エルネスト・チェ・ゲバラ、そして「エビータ」こと政治家エバ・ペロンとなっています。どこで見ることができるのかは、ナイショ。マラドーナとエビータは比較的簡単に見つかりますが、チェ・ゲバラは難易度高し!
*追記2(2013年1月8日):レティーロ地区にあるアルゼンチン空軍広場(シェラトン前・時計台のある広場)は、文中で取り上げたスラム街から盗難目的で繰り出してくる強盗たちのたまり場となっています。ちょうど2つの交番所による管轄区の境で警備の死角になっており、非常に危険な場所ですので、広場に入ること、また広場沿いの歩道を歩くことはできるだけ控えるようにしてください。(この記事にアクセスしてくださる方がとても多いので、有効な情報として追記させていただきました)
*追記3(2014年3月1日):スリが多発するパリやローマでは「襲われたら大声を出して相手を威嚇する」ことや、「相手の手をつかんで現行犯で捕まえる」ことなどが有効な対策となっていますが、南米では全く逆効果で危険です。 ご注意ください。
ブログをなかなか更新することができないので、「ブエノスアイレスの日常」をインスタグラムにてゆるりと紹介しています。これからはこちらをフォローしていただけると嬉しいです♪ http://www.instagram.com/jpportena
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