彼らが美味しくないと評する理由として挙げるポイントは、決まって以下の3つに絞られます。
1:トマトソースの存在感が薄い、またはナイ
2: 生地がスカスカのパンのよう
3:とにかくモッツァレラチーズ載せ過ぎ!
確かに、大抵はゴムみたいなチーズがどっかりたっぷり載っかっていて、見ただけでお腹がいっぱいになってしまいそうですが、ポルテーニョ(ブエノスアイレスっ子)たちはこのピザがだ~い好き。私の夫も「そのチーズが美味しいんだ!」と力強く主張します。トマトソースから主役の座を奪うチーズこそ、ブエノスアイレスのピザの醍醐味だというわけです。
そんな「典型的なポルテーニョ・スタイル」のピッツェリアの代表格が「Güerrin」(グエリン)。創業は1932年、今年で80周年を迎える老舗で、昨年末「ブエノスアイレスの文化遺産」に制定された由緒あるお店です。入り口を入ってすぐのところに設けられている「立ち食い専用カウンター」は、お昼時、立ったままピザを食べて颯爽と去って行く粋なポルテーニョのオジさまたちで大混雑するスペース。てきぱきと機敏に動くウェイターさんたちの間をすり抜けて奥に進んで行くと、テーブル席があります。いろんな種類がある中で私のおススメはSuper Güerrin(スーペル・グエリン・画像右)。秩序も遠慮もなくトッピングされたパプリカとオニオンが、どっしり重たいモッツァレラ顔負けの存在感を発揮していて美味しい。生地もパリパリではないけれど、食べやすい厚さです。
ここで働くピザ職人さんたちの中には、ピザを焼いて30年というベテランも。ブエノスアイレスのブロードウェイと呼ばれるコリエンテス大通りがまだ狭い小道だった頃から、庶民の生活に欠かせないピッツェリアとして歴史を築いてきたGüerrin。生地からはみ出るくらい惜しみなくモッツァレラが載せられているのは、もしかしたら農業大国ならではの贅沢なのかも。そんなことを考えると、欧米の人たちからいくら酷評されようとも、ポルテーニョたちが愛し続けるこの独特のピザに愛着を感じずにはいられません。
Güerrin
Av. Corrientes 1368 (Uruguay通りとTalcahuano通りの間)
Tel. 4371-8141
☆追記:ブエノスアイレスには「Güerrin」の他にも、「El Cuartito」(Talcahuano 937)や「Banchero」(Suarez 396)など、有名な老舗ピッツェリアがいくつかあります。歴史ある庶民的なお店で、faina(ファイナ=イタリア語ではファリナータ)というひよこ豆のパンケーキをピザに重ねて食べる、究極のポルテーニョ・スタイルをぜひお試しあれ!