Friday, August 31, 2012

エバ・ペロンの魅力を知る [Museo Evita]

誰でも一度は「エビータ」という名前を耳にしたことがあると思います。
エビータとは「エバ」の愛称で、実在したアルゼンチンのファーストレディ、エバ・ペロンのこと。彼女の波乱に満ちた人生は1978年にロンドンでミュージカル化され、今年4月から33年ぶりにブロードウェイで再演され大ヒットしています。マドンナが主役のエビータを演じる同名の映画をご覧になった方も多いのではないでしょうか。
これらの作品は、実はエバ・ペロンの「影の部分」をもとに作られています。 有名になるため積極的に有力者に接近して媚を売り、後にアルゼンチンの大統領となるフアン・ドミンゴ・ペロンと結婚してからは贅を極めた生活を送った女性の一生にスポットが当てられているのです。
でも、アルゼンチンにおけるエビータはあくまでも「強く生きる女性」の象徴。歴史的英雄として今もなお国民から愛され続けています。その理由が一目でわかるのが、ここ「Museo Evita」(ムセオ・エビータ=エビータ博物館)。ここでは、エビータの生い立ちと一緒に、彼女がアルゼンチン国民のために行なった重要な活動が紹介されています。


エビータは1922年5月7日、農場主であり政治家でもあったフアン・ドゥアルテと、その愛人フアナ・イバルグレンの間に誕生しました。1926年にフアンが事故死するや、母フアナは愛人という立場上、それまで住んでいた農場を追い出され、4人の子供を抱えたまま路頭に迷うことに。やがてドレスメーカーとしての職を得て、女手ひとりで子供たちを育てることになりますが、そんな母親の強くたくましい姿を見ながら育ったエビータは、貧しい生活にめげることなく、いつかは幸せをつかむのだという野望を抱き、15歳で首都ブエノスアイレスに上京します。

上京後、間もなく劇団に入団して小さな役をもらったエビータ。飛び切りの美人だったわけではありませんが、人を惹きつける天賦のスター性を秘めていたのでしょう。やがてラジオドラマや映画にも出演するようになり、どんどん活躍の場を広げて行きますが、1944年1月22日、彼女の運命が大きく変わる出来事が起こります。サン・フアン州で起きた大地震の被災者に義援金を送った女優たちが政府の式典に招待され、そこでエビータは、後にアルゼンチンの大統領となるフアン・ドミンゴ・ペロンと出会ったのです。二人はすぐ恋に落ち、1945年10月22日に結婚。翌年、ペロンが大統領に立候補すると、エビータは積極的に選挙運動に参加し、ペロンの勝利に大きく貢献しました。
大統領夫人となったエビータは、それまで究極の男尊主義国家だったアルゼンチンにおいて、女性参政権の導入を実現させます。また、エバ・ペロン財団を築き、恵まれない子供たちに衣食住と教育の機会を与えたり、労働者のための住宅建築や看護学校の設立といった慈善活動を行いました。博物館には、それらの活動を垣間見ることのできる写真や映像、所縁の物品が残されています。

労働者階級の国民からは圧倒的な支持を得たエビータでしたが、愛人の私生児という身分や、十分な教育を受けていないのに政治に参加していることが、貴族階級の人々や軍部の長官、文化人たちから反感を買っていたことも事実。また、有名になるため多数の男性に近づいたり、税金を使ってフランスやイタリアの超一流ブランドのドレスや靴を次々と購入していたことが非難されたり、財団を利用して私腹を肥やしていたという噂が立ったりしました。そこがミュージカルでも取り上げられている「影の部分」です。

博物館では、そういった影の部分について書かれている雑誌や新聞の他、エビータが着用した数々の美しいドレスや高価なバッグ、靴なども展示されていて、彼女のそういった一面を真っ向から否定するような意図は感じられません。そんなことよりも、展示物を一通り見終えて印象に残るのは、エビータの行動力です。逆境に負けず、世間体も気にせず、女性としてとことん強く、美しく振舞った彼女の魅力。口ばかりで何も行動を起こさない人が多い中、エビータのような貧しい環境で育った女性が33歳の若さで他界するまでに実現させた数々の功績は、素直に評価されて良いのではないかというのが、私の感想です。

博物館そのものは30分足らずで見て回ることができるので、併設されているカフェレストランでの食事又はお茶を兼ねてお出かけすることをおススメします。カフェレストランの紹介は過去の記事(こだわりカフェめぐり・その10)をご参照ください。
Museo Evita
Lafinur 2988(Las Heras大通りとJuan Maria Gutierrez通りの間 / パレルモ地区)
Tel. 4807-0306
公式サイト:http://www.museoevita.org

*追記1:館内のショップでは絵葉書やポスター、アクセサリーなども販売されているので、おみやげ探しにぜひのぞいてみてくださいね!

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